中国西域への旅 新疆ウイグル自治区 タシュクルガン観光
中国:新疆ウイグル自治区の国境の町:タシュクルガンで最初の朝を迎える。考えてみるとフィリピン留学後、ウズベキスタンに足を踏み入れてから今日でちょうど1ヶ月である。振り返ってみると、事前にあれやこれやと心配し気を揉んでいたことは予想外に難なく通過することができたように思う。一方で、旅が長くなればなるほどモチベーションを維持するのが難しくなるだろうなと感じさせられた。いずれにしても、ここまでの国を訪問できたことは本当に良かった、幸運だったと思う。ウズベキスタンは過激派の台頭が懸念されているところに出発直前に長年独裁体制を敷いてきた大統領が急死したということで、訪問を取りやめるべきか直前までかなり悩まされた。カザフスタンも今夏に中国大使館を狙った自爆テロがあり、キルギスもテロの危険があるとの情報を得ていた。キルギスに関しては現地訪問中に在キルギス日本大使館からテロ発生を警告する具体的なメッセージも届いていた。標的が首都となる可能性が大きいこと、現時点ではあくまで政府機関を狙った攻撃に限定されていることなどを総合的に判断し日程を消化することにしたのだが、何事もなく終われたのは幸運の賜物と言ってもいいかもしれない。正直なところ、治安面で一番不安を抱いていたのは旅の最初にあたるこれら中央アジアの国々だった。もちろん今いる新疆ウイグル自治区もテロの危険は大きいところである。いわば日々リスクと背中合わせなのだが、それを言っているとどこにも旅できなくなってしまう。常に情報収集と自分の頭で判断することが求められる。
昨日と比べ雲が多く一層寒くなったように感じられる。ホテルは床暖房が導入されており快適だが、一歩外へ出ると冷気が身体を包み、山々にも低く雲が垂れ込めている。ホテルの部屋から見える山肌は一夜にして真っ白になっており、かなり雪が積もったようだ。
町に出て人々を眺めてみる。この町では他では見られなかったような挨拶の仕方をする。握手してからお互いの手の甲にキスするという何とも手の込んだ挨拶で、男同士でもこの挨拶をする。
何といってもこの町で印象的なのは女性の服装だ。タジク帽という独特の帽子にスカーフの組み合わせで各自の独自性を表現している。この人たちを見るにつけ、治安上の理由でタジキスタンを今回の訪問予定から外したことを激しく後悔してしまう。
町じゅうにヤクなどの肉がそのまま吊り下げられていて、ここから必要な量だけ買っていく。彼らにとってはこの生々しい姿のままぶら下がっていることが何より重要なのだろう。かつて日本の生鮮スーパーが中国進出した際に全く肉が売れず、中国人従業員のアドバイスを得て、あらかじめパック詰めしておくのをやめて肉そのものをぶら下げるやり方に変えた途端に急激に売れ始めたという話を思い出す。彼らにとってパック詰めされた加工肉は「そそられない」のだろう。肉の横に毛も一緒に写っているが、これは本物の肉であることを示すために重要なのだそうだ。場合によっては切り落とされた頭が並べられていることもある。屠殺はコーランにのっとって行われるので、最も苦しみの少ないやり方でなされているはずだというのが救いと言えば言えるかもしれない。
今日は石頭城という城跡を見に行ってみる。そこへ行く途中にゾロアスター教(太古に栄えた、火を崇める原始宗教のひとつ)の寺院跡がありそこにも立ち寄る。
羊飼いの女性とすれ違うがこちらには何の関心もないといった態度だった。当たり前だがみんながみんなこちらに好意的なわけではない。
イスラム教と関係のありそうな何ともかわいらしい建物を発見。
石頭城は入り口がわかりにくくたどり着くまでかなり苦労する。2200年前にこのような建造物を造っていたというのは信じがたいことだ。整然と積まれたレンガを見ていると、細かい部分はもちろん進歩しているものの建築というもののおおもとの部分は大して変化していないのではないかと思ってしまう。
城砦からの眺めも素晴らしく、どこまでも続く大湿原や白く輝く峰々を望むことができる。
この日もウイグル食堂で食事。外食すると肉の多さ、野菜の少なさ、油の多さなどに時々辟易してしまう。現地の食事に抵抗を感じるようになるのは体調があまり良くないサインだ。体調のすぐれないときは中華でもウイグルでもなく、日本料理が食べたいと思ってしまう。自分が食べて育った自国の料理というものは、思った以上に自分自身を構成する大きな要素だったのだなと感じさせられる。考えたこともなかったが、料理が合わないせいで海外で暮らせないというのは実際起こりうることかもしれないと思う。
LEAVE A REPLY