インド悠久の旅 アウランガバード(Aurangabad)からアジャンタ(Ajanta)へ
マハーラーシュトラ(Maharashtra)州アウランガバード(Aurangabad)からエローラ(Ellora)と並ぶもうひとつの有名観光地アジャンタ(Ajanta)へ移動する。比較的近場だったエローラと違い、アジャンタは片道3時間ほどかかるということで現地で一泊する方がよいとの情報もあったが、今回は日帰りで出かけてみることにする。
午前6時半頃、宿泊中のHotel Family Innの主人にバイクで送ってもらってアジャンタロードで待っていると、事前に言われていた赤いバスではなく紫と白のバスがやって来たのでとりあえず手を上げて停める。別のバスを待っていた人がバスの運転手にアジャンタ行きがどうか尋ねてくれる。行き先はFarjapurとなっているがこのバスで間違いないとの事。
料金164ルピー(約280円)。釣りが手元に無いとの事で20ルピーしか帰って来ず、下車時に精算することになる。ローカルバスに乗るといつも下車時に乗客が車掌を取り囲んで何やらやり取りをしているのを何だろうと思って眺めていたがようやく合点がいった。早朝のバス内は酷暑期のインドとは思えないぐらい肌寒い。このローカルバスのほかにエアコン付のツーリストバス600ルピー(約1020円)があるようだが、ローカルバスで十分。思いのほか早く2時間強でアジャンタに到着した。
アジャンタは月曜定休だそうで、知らずに月曜に来ていたら往復6時間の無駄足になるところだった。入場口からアジャンタ遺跡への移動にシャトルバス16ルピー(約27円)が運行している。バス運行開始がまだとの事で、それまで園内の店でサモサ10ルピー(約17円)2個の朝食。調理にやけに時間がかかり結局観光開始が10時前になってしまった。
日本語ペラペラのインド人ガイドが1日1000ルピー(約1700円)でガイドさせてくれとしつこくつきまとう。4、5月はシーズンオフでツーリストがいないので、日本語の能力を落とさないために日本人が来るとこうしてガイドを斡旋しているのだという。ガイド同伴ではなくあくまでひとりで見て廻りたいのだと何度説明しても理解してもらえない。半ば振り切るようにしてシャトルバスに乗り込むが、窓のそばまで来てまだ同じ事を言っている。
いきなり最初の第1・2窟が宇宙的で圧巻である。
こちらは有名な壁画。
薄暗い窟内に広がる小宇宙といった趣き。
第4窟は広い空間、天井の岩の荒々しさが印象的。天井の岩が宇宙のようでもあり、モダンアートのようでもある。柱に下から照明が当てられ、演劇の舞台セットを連想させられた。
第6窟も中心部奥の仏像が印象的
第9窟 壷のようなものがあるが薄暗くフラッシュも禁止のためなかなか撮影は難しい。
第10窟 9番をさらに巨大化させたような感じ。柱の壁画が印象的。東アジア風の仏画やインド土着の仏画が混在している。
第16窟 壁や柱に彫られた立体的な彫刻が印象的。
この辺りからはアジャンタの全景を眺めることが出来る。
第17窟 柱から壁、天井に至るまで全面が壁画で埋め尽くされている。暗い緑の色調が全身に刺青を入れた人の肌のようである。
第19窟 入り口の門の彫刻が圧巻
内部は奥に位置する立像を中心に宇宙的な空間が築かれている。
第20窟 ここも中央に仏像が置かれている
第26窟 ここまでの洞の集大成のような感じ。同心円状の天井が形作る空間の中心に仏像が据えられている。その背後に寝仏と、周囲の壁に空間を取り囲むように彫られた仏像たちが居並ぶ。
アジャンタとはA(No)とGENTA(unknown secret place)の合成語でlonely place、唯一無二の場所という意味になるのだそうだ。この巨大遺跡が1000年以上も忘れ去られたまま森の中に埋もれていたそうだが、帰りのバスからこの山を眺めるとそれも頷ける気がした。
馬蹄形に囲まれたアジャンタの中心部にある小高い展望台からはアジャンタ全景を眺めることができる。
展望台に登るとしつこい物売り2人につきまとわれる。ひとりは農夫でこの辺りで拾った水晶を買えと言う。ちょっと珍しい形の石だったので交渉の末2個150ルピー(約270円)で買う。もうひとりはジュース売りでマンゴージュース(小)3本100ルピー(約170円)で買えと言う。あいつから石を買ってなぜ自分からはジュースを買わないのかとしつこい。
この先に滝が見える場所があるとの事で、物売りを振り切って先へ進む。もう家へ帰るという先ほどの水晶売りが残り2個の水晶も買ってくれと言ってくる。結局100ルピーで再度購入。もうひとりのジュース売りも追いすがってきて、何でもいいから金をくれと半ばやけになっている。「50ルピーくれ」「ダメだ」「なら10ルピーで」「ダメだ」「じゃあ40ルピー」「何で金額が上がるんだ」こんなやり取りの連続でしまいには思わずお互いに噴き出してしまった。このしつこさと何を考えているのかよくわからない、という態度に接してなぜか北インドに来たという実感を得る。
展望台から滝壺を眺める。雨季にはこれが轟々たる七筋の滝になるのだそうだ。
シャトルバスで入り口まで戻ったのが15時半。エローラと比べてアジャンタはすべてが1ヶ所に集中しているため、炎天下で見て廻るのは明らかに楽である。
帰りのバスはアジャンタ入り口には停まらない為、2kmほど先へ進んでそこから乗らなければならない。何も無い道を歩いて進むとやがて商店がいくつかある場所にたどり着いた。同じようにバス待ちをしているらしい男性にここが乗り場だと確認する。バスが来るまで立ち話し、日本人とわかり握手を求められる。
バスがやってきたのは16時半頃。今度は緑色のバスで121ルピー(約206円)。車掌いわく帰りのバスは30分に1本程度はあるそうだ。乗り合わせた乗客の話によると夜9時10時まで運行しているらしい。バス内に求人広告が掲示してあり、月給20000ルピー(約34000円)の条件。
バスの窓から眺めるとも無く流れる景色に目をやる。北インドに来てから町なかの英語表記が減ったと感じる。バスターミナルなどヒンディー語のみの表記のところも多い。南インドはタミル語圏でヒンディー語を解さない人も少なくないことから英語表記の必要性があるのかもしれないが、ヒンディー語圏のここではその必要も無いということか。
宿の主人に言われていた通り、帰路は宿近くのJami Masjid付近で下ろしてもらうよう車掌に頼む。宿に帰り着いたのは19時過ぎ、12時間以上の行程だった。渋滞があったものの帰りも3時間弱で済んだ。日帰りで果たして行けるものかと思っていたアジャンタ行、結果的には早く出れば十分可能だった。道路も覚悟していたほど悪路でもなかった。
夕食にChicken Fried Rice50ルピー(約85円)。客は大勢来るのだが、半数以上の客はここで食べるのでなく家に持ち帰って食べるようである。
このところ、遺跡などモノトーンの世界に触れることが多いこともあってか、花の色などが目に染み入るように鮮やかに映る。
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