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中国西域への旅 新疆ウイグル自治区 カラコル湖

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中国は新疆ウイグル自治区の古都カシュガルで3日目の朝。今日は中国とパキスタン・タジキスタンとの国境に近い町:タシュクルガンへ向かう。カラコルムハイウェイという古からの道がずっとパキスタンまで続いており、一度はこの道を走ってみたいと思っていた。本当の希望を言えばその先のパキスタンまで足を踏み入れたかったのだが、現在の治安状況と時期的な問題(5月~10月上旬までしか峠の道が通行できないと言われている)で今回はタシュクルガンまでだ。

9時ごろに起床する。北京時間なので実際の時間間隔としてはまだ7時ごろの明るさだ。町では北京時刻とウイグル時刻の2つが事実上存在しており、ほとんどの物事はウイグル時刻で進められる。同宿のフランス人:Clementともに国際バスターミナルへ向かう。途中の食堂で朝食。Clementはさすがフランス人だけあって食のストライクゾーンが広く、中華でもウイグルでも和食でも何でも平らげてしまう。

市内を走る20路バスでバスターミナルへ向かう。道路は意外に渋滞しておらず11時にはバスターミナルへ到着。タシュクルガン行きのバスは意外にも満員で最後の2席が残っているだけだった。同じ宿でタシュクルガンに向かうと言っていた中国人観光客の姿も見える。

バスは異常なまでの低速走行で走り出した。乗客のシートベルト着用も執拗に確認される。おそらくこの路線を高速走行してはならぬとのお達しがあるのだろう。出発して間もない正午ごろに大きめのマーケットがある町で休憩。同宿の中国人観光客たちが大きなスイカを買ってその場で食べ始め、こちらもおすそわけにあずかる。地図アプリのMapsMeで見てもこの町の地名は表示されないが、過ごしやすそうな良い町だと感じた。

その後もいくつかの村を通過する。国境線に近いところを走るということで、てっきり無人の荒野を走るのだろうと思っていたのだがまったく違っていた。その後、1回の全員下車してのパスポートチェックを経て、舗装道路とはお別れ、ガタガタの猛烈な悪路に突入する。自分たちが座っているのが最後部座席であることもあって車体の揺れは尋常ではない。前後を大型トラックに挟まれ、どの車も激しく土煙を上げながら進んでいく。スピードを出すことなどとてもできない。

車窓からふと外を見るとこの悪路を必死の形相で自転車で登っている男がいる。宿で一緒だったドレッドヘア・ひげ面の西洋人男性で、我々より1日早く出発しこの道を自力で走ろうとしているらしい。車中のみんなで口々に彼こそReal Manだと言い合った。とてもまねできることではない。

悪路地帯を抜けると懐かしのアスファルト道路に戻る。途中、白沙湖という人造湖があり、人工的に作られたものとはいえ非常に美しかった。白い砂浜とクリーム色の水面が印象的で、何台もの車が停まって写真撮影していた。我々は残念ながら素通りである。

16時過ぎになって、タシュクルガンの手前にあるカラコル湖という湖にさしかかる。どうするか決めていなかったのだが、湖畔で泊まれるらしいと聞いて急遽Clementと2人途中下車することにする。下車したのは2人だけだった。

湖畔のユルタ(遊牧民用のテント)で泊まらないかとのお誘いが早速あり、50元プラス食事30元(合計で約1200円)ということでお願いする。近くで見てみるとテントではなく、ユルタの形を模したコンクリート製のものだったが内部はそれらしい形に整えられている。Clementは持参のテントで泊まりたいらしく、湖畔で良さそうな場所を探してみるという。

標高は3650mと富士山頂上に近い高さでバスを降りると途端に空気の薄さを感じる。湖は一部凍っているものの、この標高でもまだ寄せては返す波の音を耳にすることができる。風が強く湖畔でしばしば小さな竜巻が発生している。

日が出たり雲に隠れたりするたびに湖面の色合いが次々に変化していく。

湖面には水鳥の姿を多く見かける。雲が低く垂れこめているものの、山の方を見ると氷河を遠くに臨むことができる。この氷河が溶けたらと考えると怖い。意外なことにこんな僻地でも中国人観光客の姿をちらほら見かける。湖の対岸には集落らしきものが遠くに見える。

あいにく雲が多く、湖の向こうの山々の頂を見ることはかなわない。湖の向こうにはムスターグアタ(標高7546m)、コングール山(標高7649m)という2つの7000m峰がそびえているはずで、ここからでも標高差4000mに近い。どれだけ巨大な峰がこの雲の向こうに隠れているのかと思いを馳せる。

日が落ちるにつれ寒さが厳しくなり手がかじかむ。ここは山に囲まれており日が落ちるのが早い。

コンクリートユルタに引き上げようとしたところ、先ほどの客引きがここはあまりにも寒いのでうちの村に来ないかと言う。本音はここで食事を提供したりというのが大変だからということではと勘繰ったが、いい機会なのでその話に乗ることにした。彼の自宅で泊めてもらうことになる。車で15分ほどで彼の家のあるウィ村に到着。世帯数が10前後のきわめて小さな村である。ここはキルギス族の村だそうだ。この先のタシュクルガンはタジク族の町、カシュガルはウイグル族の町である。

こちらが今晩お世話になる家。

このキルギス族男性はカパルェリさんと言い、子供たちはみな進学などでこの地を離れたという。奥さんとの会話がどうしても中国語に聞こえないので何語を話しているのか聞いてみたが、キルギス語は話せないそうだ。キルギス訛りの中国語なのだろうか。どう聞いても同じ言語には聞こえない。このようなキルギス帽が民族の特徴である。

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着いて早々、夕食を出してくれる。伝統のプロフ(中央アジア風炊き込みご飯)だが、大鍋にカリフラワーやキャベツなどの野菜とヤク肉をあらかじめ煮込んであり、そこに白米を入れて炊くという感じの調理方法だったが、これがなかなか美味かった。

食事の後はアラジンの魔法使いに出てくるような形の急須に水を入れ、その水と手のひらだけで食器を洗う。洗剤やたわしなどは一切使わない。水はそのまま土でできたたたきに吸い込まれるので外に捨てる必要もない。

応接間なのかとんでもなく広い部屋にひとり寝ることになる。無駄に広い部屋はきらいではない。

昼間吹き続けた風が夜になっても収まらず、外では時折激しい風の音が響いている。湖畔はおそらくマイナス10度を下回っているだろう。Clementはこの寒さの中でも自前のテントで湖畔に泊まっているのだろうかと少し案じつつ眠りにつく。

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