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エベレスト街道単独トレッキング25日目:ターメ滞在

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ナムチェバザール(Namche Bazar)の西、ターメ(Thami)での朝。
この午後からの霧がようやく晴れ、改めて目の前に大きな山があることに気付く。

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昔、ある本で読んだエピソード。
ある人がヒマラヤを見て回るツアーに参加したがあいにくずっと曇り空が続き、肝心の山は見えずじまいだった。ヒマラヤに一番近づくという日にようやく晴れ渡り、他のツアー参加者はすごいと感嘆の声を上げているのに自分にだけは何も見えずただ一面に薄い雲のような霧のようなものが見えるだけで、どんなに目を凝らしても山など見えなかった。何となく自分が取り残されたような気になっていると現地ガイドが声をかけてくれ、何も見えないと正直に言うとにっこり笑って「あなたのような方が神を見るのです。あそこにあなたが想像するよりはるかに大きく、はるかに高い山があると思って見てください。」と。もう一度そちらの方を見てみると、突然途方もない大きさの山が目の前に現れた。彼の想像ををはるかに越え、山の稜線は視界の外にはみ出すほどの大きさであった。彼が薄い雲だと思っていたのは巨大なヒマラヤ峰の山肌であった。

この人はもともと山に興味があったわけではなく、山自体ほとんど見たこともなかったため予備知識ゼロの状態でツアーに参加していた。曇りが続き山に徐々に近づいている実感もないままいきなり巨大な山の目の前に立つはめになり、ヒマラヤがどの程度の大きさなのかという認識もないまま桁外れの大きさのものを見たことになる。人間は自分の脳が認識できる、想定している範囲のものしか知覚できないという話である。

巨大な山を間近で見る機会があるといつもこの話を思い出す。この人が少しうらやましい気にもなる。それと同じような衝撃を別の所で味わってみたいというのも自分が世界を旅をするひとつの(メインではないにせよ)理由かもしれない。

視覚的な衝撃だけでなく、聴覚的な衝撃(音楽など)、嗅覚的な衝撃(お香の匂いなど)、味覚的衝撃(料理)、あるいは物語的衝撃(本や映画、ドラマなど)、学問的衝撃(すごい研究など)、人間的衝撃(凄い!と思わされる人)などなど、感覚的に受ける衝撃には色々種類があるだろう。
凄いもの、突出しているもの、Extremeなものに出会って感動興奮したいというのが常に自分の心にある。

今日はこの村のゴンパ(寺院)を見てみることにする。この村はトレッカーの通過する観光拠点ではあるものの同時に地元の人々が生活する場所でもある。ゴンパは人々の日常生活の場に密着しており、ここのそれはあまり観光地化されていない。ロッジの主人も近隣で最大のテンボチェ(Temboche)のゴンパは観光地化されてしまっていると嘆いていた。
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ゴンパへ行き交うおばあさんたちを多く見かける。みな念仏を唱え、マニ車(1回まわすとお経を1回読んだのと同じ功徳が得られる)を回しながら歩いている。この村は敬虔な信仰が根付いているという点では近隣の集落で一番かもしれない。

チョルテン(仏塔)のまわりを回っている人がいる。この人たちの日常に、ゴンパやチョルテンがいかに大事かということを実感させられる。
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ゴンパそばにもロッジがあり、ここはおそらく還俗したラマ僧が運営しているのではないか。
チベット仏教が根付いている場所では男は子供のころに出家修行を経験している事が多い。一部はそのまま僧侶になるだろうが、大部分は大人になって還俗し普通の勤め人として働いているというケースが多い。

ロッジのまわりには僧侶が生活するための宿房と思われる建物が並ぶ。部外者が入ってはいけないところまで踏み入ってしまったようで僧侶に注意されてしまう。何のことはない、土地に密着した宗教の重要性などと言っておきながら、こうして典型的な観光客の振る舞いをして叱られているようでは世話はない。
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丘をはさんで反対側にはさらに小さな集落 Thami Tengがある。
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今夜もう1泊し明日から帰路につく予定。宿の主人も本業のクンデ(Khunde)村での病院勤務に戻るため、明日からまた1週間村を離れるとのこと。週に5日病院で勤務し、週末は自分の村で過ごす生活だという。休みの間も村人が何人も診てくれといって訪ねて来ていたようだ。

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今回の旅は、日本を代表するアウトドアブランド: (株)モンベル様にご支援いただいています

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