エベレスト街道単独トレッキング3日目:高所順応
ここナムチェバザール(Namche Bazar:3440m)に到着して2日目の朝。
タムセルク(Thamserku:6623m)、クワンデ(Kwande:6187m)が間近に見える。
谷底からは相変わらず轟々と流れる川の音が響いている。宿のすぐ上のナムチェゴンパ(寺院)から時折鐘の音が聞こえる。とっくに夜は明けているのだが、周りを高峰に囲まれているため、7時半頃まで集落には日の光が届かない。
疲れているにも関わらず、昨夜はあまり眠れなかった。標高のせいなのか、興奮しているのか、もしかすると単独行でだれにも頼れないという事で緊張しているのかもしれない。
朝早く、日本人男性少年の親子がターメ(Thame)方面へポーターと出発するのに出くわす。少年にとっては特にここでの経験は心に残るだろう。同宿の日本人がいることも知らなかったが、先方もこちらをてっきりネパール人だと思った様子。
今日は高所順応のため、この場所でもう1泊し上へは向かわない日としている。今後5000m以上の標高まで高度を上げるが、徐々に高所に身体を適応させていく必要がある。
高所では身体に取り込める酸素の量が平地より少なくなり、5000mで平地のほぼ半分となる。そのため、たとえばヘリコプターなどで一気に高地へ行くと、高山病にかかる可能性が高くなる。徐々に標高を上げる(できれば1日の標高差500m以内)ことで、身体がより多く酸素を摂取できるよう調整するのである。
富士山でも高山病になることはあり、今後のことを考えても慎重に高所順応させていかなければならない。いったん高山病になると標高を下げる以外効果的な治療はなく(一応予防治療薬は存在するが)、症状がひどい場合は自費でのヘリコプター搬送(60〜300万円が相場とか)になってしまう。
今日は少し標高の高い丘の上まで登って身体も動かすようにする。ゴンパを横目に見ながら上を目指す。
そこここに、色とりどりの布にチベット仏教の経文を書いたタルチョがかけられている。
登り切ったところが一応空港ということになっている。空港と言っても舗装されているわけではなく土がむき出しで、おそらくヘリの離発着に使用するのだろう。広々として360度山に囲まれる感じが気持ちいい。
さらに登って丘の向こうには明日向かう予定のクムジュン村(Khumjung)が見える。この地方の聖なる山であるクンビラ(Khumbi-La:5761m)の真下に家々が建てられている。
名前の末尾にラ、リがつく山が多いが(クンビラ、チュクンリなど)、このラ、リは丘という意味だそうである。ヒマラヤでは6000m以下のものは山ではなく丘にあたり、名前のない無名峰も多いそう。
この丘からはナムチェの村からは見えなかった新たな光景が広がる。
まだ旅の序盤のナムチェバザールですでにこの景色なら、この先どんなものが見られるのかと期待が膨らむ。
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