エベレスト街道単独トレッキング4日目:クムジュン村
ナムチェバザールでの高所順応を終えて今日はクムジュン村へ向かう。朝食前に宿を出て付近を散策。丘の向こうに見えるアマダブラム(Ama Dablam:6856m)が村の規模と比べて非現実的なぐらいに大きい。思わず怪獣を連想してしまう。
タムセルクの背後で陽がのぼるにつれ、山の稜線に光の筋が現れる。
たくさんのカラスが何かに群がっている。よく見るとおそらくヤクの死骸で、すでに肋骨があらわになっている。
昨夜もあまり眠れなかったが昼寝を加えて6時間は眠れたはずと言い聞かせる。クムジュン村まで行き、そのあとの体調次第で次の進み具合を決めるつもり。
今日も快晴で山が綺麗に見える。
昨日と同じ丘まで登ると昨日は見えなかったエベレストが初めて視界に飛び込んできた。他の山と違い、エベレストだけ目まぐるしく天候が変わり、強風のせいで頂上の後ろに絶えず雲が作られている。
隣にはローツェ(Lhotse:8516m)もその勇姿を見せる。
石段を下りてクムジュン(Khumjung:3790m)へ向かう。ナムチェバザールと違って落ち着いた雰囲気の村で、子供たちは典型的なチベットの子供の顔をしている。一目見て気に入ったため予定変更して今日はここに泊まることにする。
本日の宿は、タシデレロッジ:Tashi Dele Lodge(1泊100ルピー)。タシデレとはチベットの言葉でこんにちはのような挨拶の言葉である。貫禄のある、いかにもチベット族のおかみさんが出迎えてくれる。
タシデレとはチベットの言葉で「こんにちは」「ありがとう」などを意味する。ネパールにあってもいかにチベットの影響が色濃いかが伺える。人々の風貌もネパール人のそれではなく、明らかにチベット人に近いように思われる。
村の道はすべて石垣で区切られており、登山家エドモンド・ヒラリーが建てた学校やその記念碑がある。石垣がサンゴでできていない点と山があることを除けば、沖縄:八重山諸島の島々を連想させるところがある。
天気がいいので宿の庭でゆったりとくつろぎつつ昼食をとっていると、ツアーの団体客が通りかかる。通常プランではこの村は通過するだけのことが多く、彼らもここに1泊したいと思ったのかうらめしそうにこちらを見ている。
このあたりでは燃料になる木々が少ないこともあってか、ヤクの糞を燃料として使う。このように平らな円盤状にして天日で乾かして使う。あるところで料理の乗った皿を右手に、糞を左手に持って来られたときは少々複雑な気分になった。
午後になると谷全体が雲・もやに包まれるが、厚い雲を突き破って顔を出すタムセルクの頂が高い。
ゴンパにお参りする人の姿を多く見かける。ネパールはヒンズー教が優勢の国であるが、ここまで来て初めてチベット仏教の世界に足を踏み入れたという実感が湧く。
宿でシャワーを浴びたいというと「本気か?」と聞き返される。4000m以上でシャワーを浴びると高山病を誘発しやすいという話を聞いており、その直前のここで何とか浴びていきたいと思ったのだ。シャワーといってもバケツいっぱいにお湯を沸かしてもらって、それで頭と身体を洗うだけである。ただ、浴びる場所が完全に屋外の、仕切りがあるだけで吹きさらしの場所だったので、猛スピードで終わらせた。
夜、宿の主人も帰宅。コンニチハと声をかけられる。この村では日本語の挨拶を耳にすることが多い。ここの主人はエベレスト登頂経験者で、このへんでは別に珍しいことではないらしい。他の宿の客がここまで登頂時の話を聞きに来ている。おかみさんはただひとりの宿泊客である自分に、お茶はいるか等々色々気づかってくれる。
この村を見つけたことは大きな収穫だった。村の静かな雰囲気もいいし、山に囲まれている素晴らしさを感じさせてくれる。やはり自分はチベットの人・文化・空気が好きなのだと実感する。この宿はこの2日間客がゼロだったそうで何とももったいないことだ。
部屋への帰り道、月明かりに山々が白く輝いている。
夜中トイレに起きると部屋のドアの前に大きな牛が寝ていてお互いにびっくりする。
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