中国西域への旅 新疆ウイグル自治区 クチャ観光
中国:新疆ウイグル自治区のクチャ(庫車)に滞在しているが、10/26~27とこの旅で初めてと言っていい大雨が続いている。とてもこの豪雨の中、観光地を見て回る気にはなれず2日間無駄足を踏んでいる。意外に気温も低く、そういえば10月ももうすぐ終わりなのだなと気付かされる。
宿泊先の庫車飯店は朝食付きで野菜が豊富なのは良いのだが、どの料理も何というか妙な味付けでなかなか箸が進まない。
ここクチャで訪れる予定の観光地へバスなど使って自力で行く方法がないか探ってみたのだが、どこで尋ねても現在はバスはなくタクシーチャーターしかないと言う。旅行会社にあたってみても先日ホテルまで送ってくれたドライバーの提示した500元(約7500円)より安いところは見つからない。他に同行者がいれば料金を割安にできるのだが、この時期は完全にオフシーズンにあたっているそうで中国人観光客も非常に少ないのだそうだ。そうすると、朝食時にホテルの食堂でたくさん見かける中国人は観光ではなく仕事で来ているのだろうか。散々探してみたが結局最初のドライバーにお願いすることになる。何度考えてもあまりにも高い。
10/28(金)になってようやく雨が上がる。何とか今日1日天気がもつことを願うばかり。ドライバーのショウリュウさんが9時に迎えに来てホテルをチェックアウト。今日丸1日観光の後、そのまま夜行列車で次の目的地へ向かうので、すべての荷物を持って車に乗り込む。ちなみにタクシーは中国語で出租(車)という。まずクチャ駅へ向かい夜行列車のチケットを買う。今日は中国語ペラペラの援軍がいるので楽なものである。
走り出して間もなくここでも異常低速運転区間が始まった。このルールがどういう仕組みで成り立っているのか未だにわからないのだが、40㎞制限区間で制限速度を越えて走るとどういうことになるのか、考えたくもない。やがて地層がむき出しになったようなエリアに突入する。このあたり一帯を雅丹地貌と呼ぶらしい。奇岩の塊かと思いきや軟らかい粘土のような地層でもろく崩れやすい。
ものものしい検閲を経てだだっ広い荒野へ出る。電線とそれをつなぐ電柱だけがどこまでも延々と続いている。やがて紅山石林と呼ばれる、その名の通り真っ赤な大地が目に飛び込んできた。
克孜尔(キジル)千仏洞 入場料70元(約1050円)
3世紀ごろに作られた、中国でも最も古い石窟の一つらしい。ひとりで見て回ることはできず、1グループ(あるいは1人)につき係員が1人付きっきりでいくつかの洞窟のカギを開けて案内をする。千仏洞の名前の割に見ることのできる洞窟があまりにも少なく「え、これで終わり?」と拍子抜けしてしまったのが正直なところ。2000年近く前の房や壁画をもっとふんだんに見れると勝手に思い込んでいたこちらが悪いのだが。石窟を含むエリアが広大な庭園のようになっており、ゆっくり散歩する場所としては良いかもしれない。かつて僧がこの石窟で岩壁に向かって夜も瞑想修行していたのだろう。中国語の解説が多少でも理解できれば印象も随分違ったかもしれない。
昼食はトラックドライバーたちが利用すると思われる食堂で。周囲に店はこの1軒しかなさそうで貴重な存在だ。やたら量の多い麺をいただく。
天山大峡谷 入場料45元(約680円)
ここはほかの旅行者たちにも勧められていた場所で、中国のグランドキャニオンの名にふさわしい規模と壮麗さだった。
人間と比べてみるといかにその規模が大きいことか。
雨の日でなくてよかったとつくづく思う。大雨の日はここはおそらく危険すぎて入場禁止となるだろう。これまでにいったい何度、この峡谷を激しい濁流が鉄砲水のように流れ、軟らかい地層を削り取ってきたことだろうと想像する。実際、峡谷のあちこちの少し高い場所に避難所(島)のようなものが設置されているが、急なスコールなど起こったら生きた心地がしないだろう。大自然の創り出す造形のあまりの巨大さに畏れの気持ちを抱く。
途中、門が設置してある場所があり、その先には進めなくなっている。あの世に蓋をする谷のような意味の名前か。諸星大二郎の漫画で神社の鳥居がこの世とあの世を隔てる役目を果たしていた話を思い出した。
ようやく現世へ戻ってきたような気になる。わずか2時間程度の散策だったが、ちょっとした異界への旅をした気分だ。これも観光客が少なかったからでハイシーズンではこうはいかないだろう。
日がすっかり落ちて暗くなる中、クチャ駅へ向かってひたすら坂を下る。
途中、またもや厳重すぎる検問を通過しなければならない。警戒の対象は外国人よりも地元ウイグル人である。こういう場面に出くわすたびに残念に思えて仕方ない。
出発から約11時間、ようやくクチャ駅に戻ってきた。ここでドライバー氏とはお別れである。いかにも中国という大混雑の駅舎の中で、高圧的な駅員たちに怒鳴られながら列車が来るまで右往左往する。中国で2度目、今回の旅では通算4度目となる夜行列車、もはや手慣れたもので席を確保するとすぐに眠り込んでしまった。明日の朝早くには次の目的地:トルファン(吐魯番)に着く。
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