中国西域への旅 青海省 西寧(シンニン)へ
中国:甘粛省の張掖(チャンイー)から今回の旅で3つ目の省:青海省の西寧(シンニン)へ移動する。西寧はチベット文化にとって重要な土地であり、また青海省自体がほぼすべて3000m以上の高地にあるという特殊な場所でもある。
朝まだ寝ているときに張掖の宿に中国公安部が踏み込んできた。ドアを開けると警察官1人に公安部職員が2人、その後ろに宿の主人が立っている。何事かと思っているとパスポートを見せろという。外国人が泊まっているという情報がどこかから伝わったか(別に外国人が宿泊することは違法ではないはずだが)、もしくは買春を疑われたかのどちらかだろう。この後、他の部屋も片っ端からノックして廻っていたようだったので後者かもしれない。
公安職員は部屋の中をジロジロと見回している。すぐに服を着て外に出ろというような話だったが、言葉が全く分からないふりをしてとぼけていたところパスポートの写真撮影だけで解放された。中国ビザとウズベキスタンビザのページを念入りに撮影していたようだった。日本人だったからこれで済んだということはありうるだろう。公安部職員は薄ら笑い、警察官は申し訳なさそうな顔、宿の主人は困り切った表情だったが、大したことにならず良かった。許可なく外国人を泊めて最悪営業停止処分など受けるかもしれなかった宿の主人には申し訳ないが、一番平然としていたのは自分だったかもしれない。権威を笠に着る連中を見ると無性に腹が立つ。
つい2、3日前に他の人のブログでこういうことが起こったという体験談を読んだばかりだったのだが、まさか自分の身にも起こるとは思いもしなかった。この国は時々こういう面倒なことが起こるということは頭に入れておいた方が良さそうである。いずれにしても非常に不愉快な体験だった。
嘉峪関(ジアユグアン)で待望のSIMカード購入ができたのだが、それ以降WiFi利用する際に速度が極端に落ちるなどの不具合が続いていたが、どうやらSIMカードが原因らしいとわかる。機内モードに切り替えてSIMを機能させないようにすると、WiFiも一気に快調になったからだ。加えてSIMでネット利用を行う際も異常に速度が遅いとは感じていたのだが、これはどうやら今使用しているサムソンGalaxy Note 2とChina Mobile製のSIMカードの通信方式の違いによるものらしい。
後日詳しい方に確認したところ、日本からスマホを持ち込んで利用する場合は通信方式が同じのChina UnicomのSIMカードを選ぶ必要があるとのことだった。China Unicomにも購入を断られ続けていて、結果的には支店の多いChina Mobileで購入することになったのだが、せっかく苦労して手に入れたのに無駄骨だったと分かってガックリしてしまった。
嫌な気分で1日が始まったが気を取り直して西寧へ出発する。バスのチケットが購入できなかったので、張掖西駅から中国版新幹線:洞車高鐵に乗らなければならない。中国の鉄道の時刻表や料金を確認する際は、Ctripというサイトが非常に便利でおすすめである。
宿で聞いたところ張掖西駅へはタクシーしか交通手段がないとのことで、目の前に泊まっていたタクシーと交渉し10元で行ってもらう。張掖西駅に着き14:21発91.5元(約1400円)のチケットを購入する。発車までまだ2時間以上あるので駅前の食堂で香范純鶏麺10元を注文。
新幹線に乗車するとほぼ満員で大きな荷物を持った人が多い。バスで行くと左側に万里の長城が見えるとどこかで読んだのだが、新幹線からも遠くの丘に長城らしきものが見えたが真偽はわからない。この路線はトンネルが多く、長いトンネルを抜ける度に景色が変わっていき、そのうちに雪景色となった。
青海省に入り明らかに町の景色が変わってきた。中国の町に多く見られるビルではなく、レンガ積みの古びた建物が多くなった。イスラム教のモスクとチベット仏教の寺院が混在しているようなところもあった。そういえば乗客を見回してみると、これまで優勢だったムスリム独特のあごひげに代わって口ひげの男性が増えたようだ。
出発から2時間弱で西寧に到着。列車を降りて外へ出てみると、先ほどの列車の中での印象とは違って、東進したのにむしろムスリムの比率が男女ともに上がったような気がする。一方でチベットの気配も色濃くみられるようになり、イスラムとチベットが絶妙にブレンドされているような印象だ。音楽で言うとジャズとファンクが混ぜ合わされた、あるいはコルトレーンとロリンズがミックスされたような、何とも贅沢で豪華な感じだとひとり喜んでいる。
西寧駅から宿のあるところまでバスで行こうと色々な人に聞いて回って何とか宿の最寄りのバス停まではたどり着いた。バス停で言うと「西門」「中心広場」あたりは繁華街の中心地ということになる。今回は事情があって事前に宿を予約している。予約サイトに掲載されていた宿の地図が間違っており、地元の人に場所を聞いても聞くたびに違う答えが返ってくる状態で、宿にたどり着くまでに相当苦労した。
今回の宿は青海行青年旅舎(Qinghai Travel International Youth Hostel)で、通常と違いあえて事前に予約したのには事情があったのだが、翌日これが裏目に出ることになる。
宿のある辺りは市場街といった感じの裏通りで、ぶらついていて見つけた食堂で黄燜鶏米飯20元を注文。チンゲン菜、ピーマン、鶏肉、シイタケなどに唐辛子が加わった鍋なのだが、これが今回中国で体験した中で一番美味い食事だった。辛さをどうするか聞かれるのだが、ここぞとばかりに覚えていた中国語「麻辣不要(マーラーブーヤオ)」を使って辛味なしにしてもらった(それでも十分辛かった)。張掖でも感じたことだが、味付けにかすかにカレー風味のようなものを感じる。
ここ西寧は24時間営業の店もたくさんあるような、今回の中国の旅で初めてと言っていい大都会だった。
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