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フィリピンの宗教と政治について

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日本ではほとんどしないことなのだが、ここフィリピンでは雑談の話題が宗教と政治に絡む事柄になることが多い。

前者はフィリピンの大多数の人々は敬虔なカトリック信者であることから頷ける話である。日本人の信仰心や神が実在するかどうか、輪廻転生などなど日頃話題に上ったこともないような事柄を、苦労して英語で話し合っている。宗教の話題というのは繊細な内容なので海外ではあまり大っぴらに尋ねたりしないようにしていたのだが、ここフィリピンではその辺も比較的オープンである。

何人かの先生は日曜には必ず教会に行くと言っており、実際日曜に教会の前を通りかかると讃美歌をよく耳にする。あなたは何の宗教を信仰するかと必ず聞かれるので「私は仏教徒だが、それほど熱心ではない。言ってみれば気楽な信者だ」と答えている。以前、ギタリストのエリック・クラプトンが「自分はクリスチャンだが常に敬虔な信者というわけではない。祈りたいときには熱心に祈るが、そうでないときも多い。言うなれば気楽なクリスチャンだと思う」とインタビューで答えていたのを覚えていて、それを流用させてもらっている。

先生方からは、授業の合間の雑談で神の実在を確信するに至った体験談など興味深い話も日々聞かせてもらっている。

もうひとつの政治についても、このところニュースで報道されることが多いので耳にした方もおられるだろう。麻薬犯罪撲滅を公約に掲げて選挙で圧勝したフィリピンの新大統領が、警察および自警団に令状なしで容疑者の殺害を奨励しており、既に1000人以上の容疑者と思われる人たちが殺され、それに恐れをなした密売人などが次々と自首しているという。実質的に証拠なしでの逮捕・殺害を容認しており、人権無視もはなはだしいと言わざるを得ないのだが、当の大統領は海外からの批判にも全く動じる気配がない。

先生たちとの会話では必ずと言っていいほどこの件が話題に上る。反応は様々で、フィリピンの恥だという人もいれば、必要悪だという人もいる。フィリピンの犯罪と治安が尋常でないレベルになってしまっているのは全員の意見が一致しており、それだけにこのような強権的な方法を使ってでも治安を改善するしかないと思う人も多いらしい。町中でバイクに大統領支持のステッカーを貼って走っている人もよく見かける。

中国とフィリピンの間で南シナ海上で起こっている紛争も必ずと言っていいほど話題に上った事柄だった。多くの人が戦争が起こるかもしれないと本気で恐れており、一方で日本も中国ともめていることは意外なほどに知られていなかった。

日本では多くの人が(自分も含めて)政治に無関心だと言うと、一様に理解できないという反応が返ってきた。フィリピンは国内外で多くの深刻な問題を抱えており、政治に無関心ではいられないのだろう。翻って日本を見ると、これだけ政治に無関心でいられるのはいかに平和に日々を過ごせているのかを示しているのだと思う。

一方で、日本人とフィリピン人ではどちらが幸せなのかと聞かれるとはたと考えこんでしまう。経済的には日本人が圧倒的に豊かで、治安も飛びぬけて良いのは間違いない。ただ、人々の顔を見ているとはたしてどちらが本当に幸せなのかと考えざるを得ない。フィリピン人のもともとの気質もあるだろうが、彼らの底抜けの明るさ、前向きさを見ていると自分たちが彼らより幸福であると簡単には言えない気がする。

ある先生にこう聞かれたときにはうまく答えることができなかった。

「日本はいいね。治安もよくて、町は清潔で、お金もあって高い技術力もあって。なのにどうして毎年そんなにたくさんの人が自ら命を絶っているの?」

価値観、文化の異なる国にいるとふだんは決して考えないようなことを次々に考えさせられる。

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