エベレスト街道単独トレッキング8日目:ゴーキョ
今日はいよいよ前半のハイライト、ここマッチェルモ(Machherumo)からゴーキョ(Gokyo)へのトレッキングである。
何度か目が覚めたもののこれまでのトレックで最も長い時間眠ることができた。
いつもは日の出前に起きていたのに、今日は朝日が窓から差し込むのに気付いて慌てて飛び起きる。
昨日は霧で全容が見えなかったが、朝の澄んだ空気の中で見るマッチェルモの景色は素晴らしい。
朝食後いよいよ出発。お世話になった宿が小さくなっていく。
トレッカーはみな同じ方面に向かうものだとばかり思っていたが、意外にも多くのトレッカーが別のルートあるいは下山ルートに向かう。
そんなわけで大半の時間を、前後見回しても自分と山のほかは誰もいない状態で歩くことになった。
時折酸素が足りないと感じ、昨夜の頭痛がぶり返す。大した傾斜ではないのに、とにかく登りで足が前に出ない。
ここまでの歩きでは極めて薄いアンダーウェア1枚(メリノウール)とゴアテックスのレインウェアのみで十分しのいでこれたが、
汗をかくぐらいのペースで歩けないため身体が温まらず初めてフリースを着用する。
前方にそびえるチョーオユー(Cho Oyu:8201m)方面から絶え間なく雪解け水が激流となって流れてくる。
やがて1つ目の小さな湖(というより池)、2つ目の深いターコイズ(トルコ石)色の湖を経て、ようやく3つ目の湖にたどり着く。
ここまで4時間かかってしまった。
この3つ目の湖のそばにロッジが立ち並ぶゴーキョ(Gokyo:4750m)の集落がある。
思ったよりロッジの数が多く、一番高台に立つゴーキョリゾート:Gokyo Resort(1泊200ルピー)を今日の宿にする。
湖と山が目の前に広がり、それが部屋の窓からも一望できる。
数十人単位での宿泊が可能で、本屋・駄菓子屋・ベーカリーを併設している。
高度を上げた影響は少なからず出ているようで、今日は自重しなければと思う。
あまりに日差しが強いのでサングラスをかける。サングラス越しに山を見ると氷河が淡い透き通った青で美しい。
宿の主人に勧められて宿の裏の丘を登る。
この丘の向こうはエベレスト方面から流れ下る巨大な氷河で、この丘も盛り上がった氷河の川岸である。
氷河は一面に砂れきと氷で灰白色一色の、モノトーンの世界である。
丘の上に女性の先客がひとり。お互いにっこり目配せするだけでほとんど言葉は交わさず、ただこの眺望を共有する。
氷河がどこまでも続くさまはちょっとこの星の光景とは思えなかった。
氷河に陽光が当たると天然石のような輝きを放ち、美しい。
時折氷の割れる大きな音が響く。この氷河が溶けたら、簡単に丘を乗り越えて集落をひと飲みにするだろう。
丘から氷河の反対側を見ると、湖から山にかけての景色が美しい。
ゴーキョに対してはもっと荒涼としたイメージを抱いていたが、緑こそ無いものの湖もありどこかヨーロッパリゾートの趣きがある。宿の主人も何年も前にそこに目をつけ、ここはリゾート地として開発していかなければならないと思ったのだそうだ。
夕食後、うつらうつらして起きるとまた軽い頭痛がする。眠ると呼吸が浅くなり、高山病が誘発されるのだ。とにかく行動(と呼吸)には注意しなければ。
夕方以降、湖から発生した霧があたり一帯に立ち込め、夜半を過ぎても晴れることはなかった。
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