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2014チベットへの旅:9日目 ダク・イェルパ

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シガツェからラサに戻ってきた翌朝。明日にはチベットを離れなければならない。早起きしてまだ人通りもない中、始発に近いであろうバス(市内一律10元)に乗って中心部へ向かう。目指すは明け方のポタラ宮である。

チベット旅行では個人行動が厳しく制限されることは始めからわかっていた事だが、最後に少しだけでも自分ひとりで好きなように歩きたかったのである。

ポタラ宮の道を挟んで向かい側は広場と大きな公園になっており、早朝には地元の人達が思い思いに祈りを捧げたり、あるいは掃除をしたり、とラサの観光都市以外の顔が垣間見える。露店のようなものもいくつか出ており、ここで朝の腹ごしらえをしてから仕事という人も多いようだ。

夜中でもポタラ宮周辺は街灯があり真っ暗にはならない。ライトアップされたストゥーパ(仏塔)がほとんど青紫と行っていいような空に映える。やがて明るくなり始め、徐々に人出も増えてくる。日中は公園への出入りも厳しいセキュリティチェックがあるのだが、この時間帯はフリーパスである。ポタラ宮の向こうに見える山が白く雪をかぶっている。昨夜は相当冷え込んだらしい。

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バスや車の往来も徐々に増え、日常が始まりつつある。公園にもセキュリティスタッフが配置され、探知機を通らないと往来できない体制に戻された。つかの間の自由であった。

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今日はガンデン寺というチベット仏教ゲルク派総本山へ行くことになっていたが、最後になってガイドから別のところにしないかとの提案が出された。ガンデン寺のほうが有名だが自分はこちらのほうがいいと思うと推薦されたのが、ダク・イェルパである。ラサ郊外にある古くからある修行場で、チベット歴史上の偉人たちが修行した場所として名高いそうである。

ダク・イェルパは標高4300m程度の高さにあり、ラサから車で山道をグングン登っていく。途中、無数のタルチョがはためく峠などを越えてようやく到着。急峻な斜面に点々と房が建てられており、まさに修行の地という感じである。

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斜面が急なので、ひとつひとつ見てまわろうとすると長い階段を登らねばならない。標高4300m超でのこの作業は山登りと変わらない。地元の人も大勢参詣していたがみな一様に肩で息をしていた。ガイドに建物のひとつひとつを説明してもらう。ここにこもって悟りを開くまで瞑想したと言われるようなところがまさに洞窟そのもので、達磨のように岩と対峙してずっと座っていたのだろうかなどと想像を巡らせる。

急峻な斜面にへばりつくように建物が築かれているさまは印象的である。

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建物の眼下には広大な緑の平原が広がっているのだが、ここでは今も鳥葬が行われているそうである。鳥葬というのはチベット独特の弔い方で、亡き骸を鳥(ハゲワシ)の大群に食べさせる方法である。専門の技術者が亡き骸を切り刻み、鳥が食べやすいようにして残さず食べてもらうのだ。これによって魂が天に登ると信じられているからという説もあれば、重要なのは魂であり魂が離れた肉体には何の意味も無いので鳥に食べさせることで役立てたほうが良いという実利的な説もある。このガイド自身、自分のおじが亡くなった時に亡き骸を処理した経験があるそうだ。彼自身、宗教的な家の生まれのようで、それもあってここを見せたかったのだろう。誰でもが鳥葬してもらえるわけではなく、徳を積んだ者だけがその名誉を与えられるそうだ。

今朝も鳥葬が行われたそうで、その場所に行くと髪の毛だけが大量に残っており、今までに経験したことのない臭いが強く残っていた。少し離れた所で男たちが草の上に座って休んでいるが、もしかすると彼らがこの儀式の担当者なのかもしれない。

ひと通り見学し終わった後ガイドが「どうだったか?」と聞くので、今回の旅で一番印象に残った場所だと答えた。修行を行うための、俗世とは隔絶した環境、まさに聖なる空間であり、外国人である自分にとってチベット仏教の何がしかを(具体的に何をというのがはっきり言葉にできないのだが)体感できるまたとない機会だったのではないかと思う。

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ラサに戻ってガイドとはここでお別れである。夕食までの間、もう一度ひとりで八角街(バルコル)を散策した。

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夕方、大昭寺(ジョカン)では多くの人が五体投地を繰り返していた。1回ごとに両手、両膝、額を地面につけて行う礼拝方法である。これを繰り返しながら数千キロにわたって歩き続ける巡礼者も珍しくないとか。寺院前の広場がやがていっぱいになり、みなが取り憑かれたように身を投げ出し始める。静かな熱狂が広がっていき、その一角だけが切り離されて異界となるように感じられた。不思議と居心地は悪くなく自分がそこにいることが当たり前に感じられる。もしかすると今回の旅でチベットを一番感じられた時間だったかもしれない。

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