2014チベットへの旅:序章 富士山
2010年初めての海外旅行で行き先として当初考えていたのはチベットだった。
特に縁があったわけでもなく、どうしても見たいものがあったというわけでもない。かつてアルバイトをしていた職場に大学院生がいて、チベット文学を研究するためにチベットに渡る、日本には戻ってこないつもりだと話しているのを聞いてそんな人もいるのかと思ったぐらいである。
実際に行ってみようとするとチベットは外国人が簡単には立ち入ることができないことがわかってきた。通常の観光にはない特別の許可が必要で、その方針も頻繁に変更される。さらに外国人が単独で旅するのも限りなく難しく、逮捕されることもありうるとか。
初めての海外旅行でどうしていいか何も分からず右往左往しているような自分は、当然のごとくチベットを第1候補から外すことになった。第2候補はブータンだったが、ここも自由な観光は認められておらず高額な公定料金がかかるということで、結局ネパールを渡航先に選んだという経緯があった。
近年は同じ国籍の外国人5人以上の団体でなければ入域不可となったという情報が流れたり色々不明瞭ではあったが、依然としてチベットは敷居の高い存在であった。少なくとも個人旅行に対しては許可を出さないというのが当局の一貫した方針のようであった。
ひょんなことから見ず知らずの男女8人でチベット行きが実現することになった。外国人の場合旅行会社を通さなければ許可を得られず、許可が出ても旅行会社が提示してくる費用は非常に高額である。しかし人数が増えればそれだけ一人当たりの負担金額は小さくなる。同じようにチベット行きの機会を虎視眈々と狙っていた人たちが集結したのである。
自由旅行はできず、期間中ずっとガイド付きであらかじめ申請したとおりの日程しか消化できない。昔は色々抜け道があったようで無許可で自由旅行というのも少なからずあったようだが、近年は取り締まりが厳しくなってしまったようだ。それでも初めてのチベット、気持ちは自然と高揚してくる。団体旅行に慣れていないのでそこへの不安は多少ある。
翌月からはヒマラヤトレッキングにも出かける予定でおり、そちらへの高所順応としても今回の旅行は役立ちそうである。日本でできる高所対策として、出発直前に富士山に2回登って身体の準備をした。日の出・日の入りを富士から眺めながら、ここよりさらに標高が高いチベットに想いを巡らせる。
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