初めての海外旅行:ネパール 1.カトマンズへ
ひとり旅が好きでよく国内旅行をしていた。初めて沖縄:石垣島と周辺の八重山諸島を訪れた時になぜか、もうこれ以上国内を旅しても満足できなくなるという予感がした。
それまで海外に行ったこともなく海外旅行など考えてみたこともなかったのだが、沖縄での予感に引きずられるようにして、気がつくと初めての旅行先をどこにしようかと考え始めていた。
特にこれまで関わりがあったわけでも縁があったわけでもないのだが、最初に頭に浮かんだのはなぜかチベットだった。なぜヨーロッパなりアメリカなり、一般的な観光旅行先を通り越してチベットが出てきたのかは不思議である。人と同じでは嫌だという気持ちがどこかにあったのだろう。
調べてみるとチベットに個人旅行することは現在は非常に難しいことがわかった。ツアーで団体行動になること、費用もべらぼうに高いことなどから、次善の策として同じチベット系の国と言われるブータン(この翌年にはブータン皇太子ご夫妻の来日が話題となった)を考えたが、こちらも観光客の入国に制限がありかなり高額の費用がかかる上、やはり自由旅行はできないとわかった。
ネパールは第3候補として浮上してきた国だった。正直なところネパールについてあまり知識もなじみもなく、具体的なイメージがわかなかった。当時の勤務先の東京:田町にデウラリバッティというネパール料理店があり、ネパールの国民食と言えるダルバートを目当てにここをよく利用していたというのが唯一のつながりと言えるかもしれない。
初めてのパスポートを作り、日本の旅行会社に航空券の手配を依頼した。言葉や空港での乗り換えなど諸々不安に思いながら出発当日を迎えた。
キャセイパシフィック航空で香港からバングラデシュのダッカを経由して、ネパールの首都:カトマンズへ向かう。移動時間は約15時間、こうして見ると同じアジアでも遠い国である。
香港からカトマンズへは香港ドラゴン航空で向かう。ダッカでかなりの人数が降り、機内に残ってカトマンズへ向かう人は数えるほどになった。一気に乗客が減り、スチュワーデスも明らかにリラックスモードである。
真っ暗な中、カトマンズのトリブヴァン国際空港へ着陸。国際空港とは言うものの、お世辞にも近代的な造りとは言えない簡素な建物であった。薄暗い照明が照らす中、入国審査を受ける。係官がパスポートとこちらの顔を何度も見比べてやけに険しい表情をしている。「日本語でWelcomeはどう言うか答えてみろ」と詰問調で聞いてくる。日本人かどうか確かめようとしているのかと思いながら「Welcomeは日本語では’ようこそ’だ」と答えると、満面の笑顔になって「ヨウコソ!」。やられた。
空港から一歩出ると、薄暗い中に客引きと思われる無数の男たちがうろついている。ホテルまでの車をあらかじめお願いしてあったので、ドライバーと落ち合ってカトマンズ市内中心部へ向かう。
日本のように夜が明るくなくそこらじゅう暗がりだらけで、道もガタガタ、壊れそうな建物もたくさんあり、正直なところえらいところに来てしまったなと思ったものである。北斗の拳に出てくる世紀末の荒れ果てた町を思わず連想してしまった。やがてタメル地区という観光客が集中するエリアに到着する。
本日の宿:ホテルマルシャンディ(Hotel Marshyangdi)
がっしりした鉄の門扉があり、警備員が常駐していてずいぶんものものしいホテルである。部屋に通されると、少々古めかしいものの広々した清潔な部屋だった。今日1日、空港と機内にいる時間があまりに長かったため、乾燥した空気にあたりすぎて風邪をひき始めている。部屋にミネラルウォーターが置いてあり、水分補給して早々に床につく。初めての海外をかみしめる間もなく、慌ただしく初日が過ぎていった。
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